ほうこうじブログ

曹洞宗報效寺住職のページです

法話のご案内

曹洞宗に東北管区教化センター(仙台市)という布教部署があります。ここにはテレホン法話のコーナーがあり、今月1〜10日は小生の担当です。以下はその法話原稿です。

 

 小さな希望の灯り

 

お盆が終り片付けの折りに開けた賽銭箱の中に、ひときわ目だつ黄色い封筒がありました。中にはお賽銭の小銭とカードに書かれた短い手紙が入っていました。

封筒の表には「ありがとう 10年間御供養 御苦労様でした.」と、カードには「2011年3月11日、東松島で義理の妹を亡くしています.いつも心にありますが遠く離れていると毎回行く事もできず、駅前での供養が出来る事、心からありがとうの気持ちです.10年間御苦労様でした.」とありました。

 

東日本大震災から一年後、私たちは「慰霊と希望の集い」と名づけたささやかな追悼集会を開きました。ローカル線の駅前広場に雪像を作り、ロウソクを灯し、かがり火を焚いてお経を唱えたり、歌を歌ったりしました。夕方から始まる集会には、仲間や近所の人たちが集まり、電車から降りてくる通勤・通学帰りの人たちが加わったりしてくれました。それから10年、駅の待合室でコンサートを開いたり、地元野菜を使った料理をふるまったりと、いくつかのイベントを織り込みながら続けてきたのです。

 

手紙に書かれたことばを読み返しながら、悲しみの大きさ、手を合わせてきた10年という時間の重さを考えました。この大災害で家族や親しい人を失ったおおぜいの人たち、そのほとんど全ての人たちを私は知らないのですが、その一人ひとりはこの10年間3月11日をどんな思いで迎えてきたのでしょうか。どのように悲しみに耐えてきたのでしょうか。そして希望は見えているのでしょうか。

 

私たちのささやかな追悼集会は、来年以降も続けることになりました。感謝の手紙をくれた方のことばが、10年で一区切りをつけるとしてきた私たちの、新たな希望の灯りになったからです。

 

東北管区教化センターのHPはこちら

http://soto-tohoku.net

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